4人用食卓 猟奇的な彼女 イルマーレ ホワイトバレンタイン

PRODUCTION NOTE
     
1999年の8月。韓国のパソコン通信"ナウヌリ"の掲示板に、"キョンウ74"というID名で書かれた小説が登場した。それはエキセントリックな女子大生と兵役を終らせて学校に戻ったナイーヴな男子大学生との起伏に飛んだラブストーリーだった。この小説「猟奇的な彼女」は大人気を呼び、後に原作者のホームページで連載が継続され、単行本化された後は本国で10万部を超える大ベストセラーとなった。
映画会社、シンシネが映画化を企画。最初はアドバイザーとして参加していたクァク・ジェエンが、結局、監督となる。原作は手紙を木の下に埋めるところで終るが、観客を幸福な気持ちにするエンディングにしたい、という監督の希望で、原作にはなかった"延長線"が加えられた。
「原作はエピソードの中心で、情感あるラブストーリーではなかったので、"延長線"ではそこを強化しました。また、ヒロインが書くシナリオを映像化することで、視覚的な要素もふくらませました。彼女のシナリオを通じて、アクション映画や時代劇などすべてのジャンルを少しずつ描きたかったのです。観客たちがこの映画を楽しんでくれて、ほんの少し幸せになってくれれば、うれしいですね」。完成した作品は本国では記録的な大ヒットとなり、監督の意図どおり、最後は至福の時間を味わえる最高のラブストーリーとなった。
「イルマーレ」などに出演してきた期待の新人女優チョン・ジヒョンがヒロインに扮して、圧倒的な魅力を見せ、この作品で韓国のアカデミー賞といわれる大鐘賞の主演女優賞と人気賞をWで獲得。暴力的で、過激な行動をとりながらも、心の奥にやさしさと繊細さを持つヒロイン役で圧倒的な魅力を見せる。「シナリオが良かったので、この映画への出演を決めました。彼女の学生生活とか、言葉使い、抱える悩みとか、私たちの世代に共通しています。性格自身も私に近いところがありました。猟奇的といわれる彼女ですが、私には正義感溢れ、堂々としていて、素敵だと思いました」とジヒョンは今回の役柄について語る。ベストセラーのヒロインを演じることに少しプレッシャーもあったのだろうか? 「映画化に関しては脚本の段階で監督がすいぶん手を加えていて、映画だけのエピソードも多かったので、自分のペースで楽しく撮影ができました」。こうして、特に女性層に支持されるタフで、かわいい21世紀型ニュー・ヒロインが誕生した。
暴力的で、過激ながらも、実は心の奥に秘めたやさしさにふれ、彼女を見守ろうと決意するキョヌ役を演じるのは、この映画でデビューを飾ったチャ・テヒョン。これまでテレビ・ドラマの人気者で、韓国のジム・キャリーともいわれる彼だが、この映画の成功で、本国では大ブレイク中。「シナリオを読んで悩みました。やるべきか、やめるべきか。僕にはできないような気もしましたが、やらないと後悔しそうな気もしたし。でも最終的にはやってみました」。もともと、原作のファンでもあったという。「とてもおもしろく読んだ本でした。僕はもともと、ロマンティック・コメディが好きだったので。大きな笑いをとるよりは、小さな笑いを何度かとるほうが自分に合っています。わざとらしく笑わせようとしても、観客をだますことはできません。何より自然な演技を心がけています」。監督はキョヌのキャラクターをヒッチコック映画の主人公のように、罪のない人間が犯罪者のぬれぎぬをきせられるうちに、変わっていくという設定にした。
「ある時、監督が、"もし、テヒョンがこの役をやってなかったら、今ごろ、どうしたかな"といってくれて、その言葉がすごく印象に残りました」こうして、テヒョンは見事に抜擢にこたえ、新しい韓国の星となったのだ。
韓国では"猟奇=ヨプキ"という言葉が、社会現象となり、MBCテレビの流行語大賞にも選ばれている。「他とは変わったおもしろさ」を持つという意味で使われることが多いが、映画では強烈な魅力を持つヒロインの形容詞となっている。「心やさしいキョヌはたった一度だけ、酒に酔った女の人を助けてあげただけで、留置所に行ったり、脱走兵の人質になったり、受難の連続ですが、それでも彼女に会うのは、彼女の麻薬のような魅力に酔っているからです。そして、猟奇的な彼女は、実は胸の奥に深い罪の意識をかかえていて、わざと明るくふるまおうとしています。自分勝手なように見えても、実は人を配慮する心がある人物なんです。私は過去の映画でも罪の意識を持った人物を描いてきましたが、痛みとは、人が生きていくことの原動力だし、痛みが解決するときにこそ、人は喜びを感じるのだと思います」。そう語るのは、監督のグァク・ジェヨン。また、原作者であるキム・ホシクは「通常、原作のほうが映画化作品よりおもしろいといわれることが多いですが、今回のシナリオは原作よりおもしろいですね。ふたりの恋物語は、10代にとっては、あんな恋愛がしたい、という憧れの対象となり、20代にとっては、自分の恋を重ねて切実な気持ちになり、30代には、あの頃、あんな恋をしていたっけ、と懐かしい思いをくすぐるのかもしれませんね。」。こうして、すべての世代を笑わせながらも、切なく感動的な気持ちにさせる心揺さぶる青春ラブストーリーの傑作が誕生したのだ。
韓国で「猟奇」という言葉が頻繁に目に付くようになったのは2000年の初夏ごろから。と言っても、気味の悪い、おどろおどろしい事件が特に流行していた訳ではない。「猟奇」という言葉を韓国の辞書で調べると「奇怪なことや物に好奇心を持って楽しみ訪ね歩くこと。奇怪な、異様な、気味の悪い」と出てくる。やはり本来ならあまりお目にかかりたくない言葉だ。ところがこの時期に広がった「猟奇」は、ちょっと違う意味合いを持っていたのである。
「猟奇」の意味がいつごろから変化してきたかは定かではないが、ブームの明確なきっかけとなったのは、99年の8月にパソコン通信で連載が始まった小説「猟奇的な彼女」だった。お酒に酔っ払って電車の中で吐いてしまったり、男を殴ったり、強引で常識はずれの行動をとるヒロインを「猟奇的」と表現したこの小説は、話題が話題を呼び爆発的人気となった。このため、ネットを操る若者の間で、「猟奇」の意味は「特異、タフ、面白い、突拍子もない」と強く印象付けられるようになった。
韓国ではインターネット環境が充実している。その利用者は主に10代20代の若者たちと言うこともあって、若者文化は、ネチズン間で人気を博して話題になり、メジャーになっていくというパターンが少なくない。この「猟奇的な彼女」もその代表格だ。
99年8月、パソコン通信「ナウヌリ」のユーモア欄に掲載されたある男の恋愛話がすべての始まりだった。1975年生まれの大学生キム・ホシク氏が、「キョヌ74」のID名で、その年の5月に地下鉄で出会ったタフな女性とのエピソードを書いたお話だ。当初は3編で終わる予定だったものが、ファンメールが殺到し、果てはキム氏のファンクラブが結成されるほどの好評ぶりに、2000年の3月まで35編が連載された。2000年1月には本として出版され、10万部以上を売り上げるベストセラーに。そして2001年には映画化へと至り、全国で500万人近い人々が見る特大ヒットになったのである。
実話が元になっているだけに、キム氏はこの猟奇的な「彼女」の写真を公開して欲しいと迫られることが多かったと言うが、それは絶対に明かさない約束だからと最後まで「彼女」の存在が公になることは無かった。キム・ホシク氏はその後大学を卒業。インターネット関連会社に勤め、個人のホームページ(http://www.kyunwoo.net)を開き作家志望の人々の投稿文を載せている。ちなみに原作は映画と違ってハッピーエンドではなく、キム氏は、2001年10月に「彼女」とは別の女性と結婚した。



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